先日発生した熊本県での地震で、アパートが倒壊して入居者が亡くなりました。このように地震で入居者が死亡した場合に、大家は入居者の遺族に対して損害賠償責任を負うのでしょうか。
民法717条は、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」と規定しています。
つまり占有者である入居者が損害発生防止のために必要な注意をしていれば(通常は入居者に注意義務違反はありません)、所有者である大家が損害賠償責任を負うことになります。
もっとも、建物の何らかの瑕疵(欠陥)がなければ、大家が損害賠償責任を負うことはありませんが、過去の判例では建築当時の耐震基準を満たしていたかどうかにより建物の瑕疵の有無を判断しています。
つまり耐震基準を満たさない建物であれば建物所有者である大家さんは損害賠償責任を負うことになります。なお、昭和56年6月に建築基準法が改正されたことに伴い、耐震基準が新しくなっていますが、建築時には耐震基準を満たしていたが、新耐震基準は満たしていない場合でも、建物の補修等が要求される場合でない限り瑕疵とは認められず、大家さんは責任を負わないと思われます。
当弁護士事務所がある町田市・相模原市のエリアでも築古の木造アパートを賃貸している大家さんは多いかと思いますが、賃貸経営者として、少なくとも旧耐震基準すら満たさないアパートを賃貸している方は、耐震工事等により大家としての義務を果たすように心がけるべきです。
平成28年4月18日