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奨学金に対する保証人の過払金

半額しか支払い義務がないのに日本学生支援機構(旧日本育英会)から全額の支払いを求められたとして、学生の保証人が過払金の返還を求めた訴訟の控訴審で、札幌高裁は原告である保証人の請求を認める判決を出しました。日本学生支援機構側は、上告を見送ることを明らかにしているのでこの判決が確定する見込みです。

奨学金の返済を巡り、半額しか支払いの義務がない保証人に全額を求めたのは違法だとして、北海道小樽市の男性(76)と札幌市の女性(69)が日本学生支援機構(横浜市)を相手取り過払い金など計約227万円の返還を求めた訴訟の控訴審判決が19日、札幌高裁であった。大竹優子裁判長は過払い金計約140万円の返還を命じた1審・札幌地裁判決の取り消しを求めた機構側の主張を退ける一方、原告側の主張を新たに認め、利息分を上乗せした計約200万円の支払いを命じた。(毎日新聞2022/5/20より)

連帯保証人と保証人の違い

機関保証と人的保証

日本学生支援機構の奨学金を借りる場合、親族の保証人の代わりに保証会社に毎月一定の保証料を支払い、もし学生が返済できなくなったら保証会社が返済を肩代わりする「機関保証」と、保証料が発生しない代わりに親族を保証人にする「人的保証」のいずれかを選択します。

人的保証の場合、父母等を連帯保証人に、4等身内の親族(叔父、叔母が多い)を(単純)保証人とすることを求められます。

保証人の分別の利益

保証人には、連帯保証人と異なり「分別の利益」(ぶんべつのりえき)が認められています。「分別の利益」とは、保証人は債務を保証人の頭数で分割した金額の保証債務を負うというものです。連帯保証人が1人、保証人が1人の場合、保証人は奨学金の2分の1の金額の支払義務があります。他方、連帯保証人には分別の利益がないので、奨学金全額の支払い義務があります。

今回の札幌高裁判決

今回の裁判のケースでは奨学金を借りた学生が返済できなくなり、連帯保証人も返済しなかったため、保証人が日本学生支援機構の請求に応じて奨学金残金全額を返済しました。しかし、本来保証人は分別の利益があるので奨学金残金の半分だけの支払義務があるのですから、支払義務がなかった半分の返還を求めたのです。

日本学生支援機構は保証人が分別の利益を主張しないで全額を支払ったのだから、返還する義務はないと主張しました。しかし、裁判所は保証人の分別の利益は自ら主張しなくても当然に発生するので、日本学生支援機構に対して半分の返還を命じました。

日本学生支援機構の今後の対応

日本学生支援機構は、今後、2分の1以上の返済をした他の保証人に対しても返金すると説明しています。

今後、請求が認められた原告の方に対して所要の支払手続を進めるとともに、本機構に記録が存在する過去5年以内の返還完了事案を含め、保証人の方から自己の負担部分を超える弁済を受けた返還金についても、個々の保証人にご連絡した上で速やかに超過額の返金手続を進めてまいります。対象となる方々には、今月中旬から7月上旬頃にかけて、順次ご連絡を差し上げる予定です。 なお、これまで保証人の方への請求に当たっては返還未済額の全額を請求してきたところですが、今後は判決内容に照らし、返還未済額の2分の1の額を請求させていただくこととします。(日本学生支援機構HPお知らせ抜粋)

主債務者である学生等の借金は復活するのか?

今回の判決では、2分の1の自己負担部分を超えた保証人の返済は無効とされていますので、日本学生支援機構が保証人に返金すると主債務者である旧学生とその親である連帯保証人の債務は復活するはずです。奨学金の滞納には数パーセントの延滞金が加算されますので、そもそも支払能力が乏しかった旧学生に復活した奨学金の請求が行くと、旧学生は返済できず、自己破産をせざる得なくなるのではとも思われます。

もっとも、日本学生支援機構が保証人に返金後に、復活した債務を旧学生らに請求するのかは、まだ明らかになっていません。そもそも、請求しない可能性もあり得ます。

消費者金融等に対する利息制限法違反の過払金とは異なる

この奨学金の返還請求について「過払金」という表現がありますが、消費者金融等が利息制限法の上限金利を超える違法な金利を受領していたために払い過ぎになる、いわゆる「過払金」とは異なります。奨学金は低金利ですので、違法な金利を取っている訳ではありません。

払い過ぎた返済分の返還を請求するという意味では同じですが(法律用語で「不当利得返還請求」といいますが、不当利得返還請求であることは同じです)、その発生の仕組みは全く異なります。奨学金に対しては、今回のように保証人が全額弁済したような特殊な事案以外では過払金の請求はできません。

令和4年6月10日

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